主な研究内容

❖研究分野

研究内容は、(A)都市防災(B)環境調和まちづくり(C)都市環境インフラ(D)都市環境デザインの4つに分けられます。
 それぞれの研究グループは学内や他大学等と連携して、共同研究を行っています。

おもな所属学会:
日本建築学会、地域安全学会、GIS学会、空気調和・衛生工学会、エネルギー資源学会、都市計画学会


❖(A)都市防災分野

都市空間において人間が生活する上で「安心・安全」は最も重要な要件のひとつです。そこで、空間を科学的・視覚的に分析できるGISを活用し、都市防災の在り方について研究を進めています。おもに横浜市をフィールドとして地震や、水害、崖崩れの被害を軽減する都市の計画、日常の取組みが非常時にも活きるまちづくり、災害発生直後の緊急対応などの危機管理に関する研究を行い、安心・安全な都市の構築を目指します。

 

キーワード:
地震風水害崖崩れ、情報公開、防災計画、シミュレーション、情報の知恵化、WebGIS、ライフライン防災防災まちづくり、避難計画、地域コミュニティ、防犯

 

防災に関する研究関係機関
大 学 ⇒ 横国大 安心・安全の科学教育研究センター, 京都大学 防災防究所, 千葉大学など
学 会 ⇒ 地域安全学会 「環境と防災小委員会」, 日本建築学会「地震調査連絡会」「地球環境委員会」「文化遺産災害対策小委員会」など
自治体 ⇒ 横浜市保土ケ谷区, 危機管理対策室など
その他 ⇒ 消防科学総合センター, 災害 GIS ボランティアネットワークなど

 

研究タイトルの一例
・ライフラインの復旧最適化(自律分散型拠点構築による地域防災力向上)
・地震火災延焼シミュレーションシステムを用いた緑地・空地評価
・地域の防災・防犯コミュニティに関する研究
・地域における防災まちづくりの推進
・急傾斜地の危険度評価
・市町村防災図上訓練手法の検討
・災害時を想定した歴史的建造物保全

 

最近のおもな研究プロジェクト(2004年度以降)
・マルチハザード危機管理対応のための空間情報デジタルワークスペースの基本設計(科学研究費補助金 2004~2005年度)
・都市型水害軽減化のための地域の時空間情報技術活用に関する研究(科学研究費補助金 2004~2006年度)
・リアルタイム崖崩壊予測システムに関する研究開発(建設技術研究開発助成2004年度)
・防災用空間データベースの構築と緊急対応支援GISの開発(文部科学省2006年)
・相互に関連したライフラインの復旧最適化に関する研究(文部科学省2007~2011年度)
・横浜市保土ヶ谷区におけるローカルリスクガバナンスに関する調査研究(企業2007年度)
・がけ崩れ崩壊危険度の判定に関する研究(地方自治体2008年度)

 

(教員コメント)
 過去の災害に学んで、それをどのように現在・未来に活かすことができるかを考え、『安全に安心して暮らせる都市・地域づくり』をテーマに研究を進めています。構造物の建設や耐震性能を高くするといったハード対策を進める一方で、速やかな避難や、地域で助け合う仕組みづくりを支援するようなソフト対策が必要です。災害時に人の命や財産を守るためには、限られた時間、空間、資源の中でやりくりすることになり、時空間的な制約を解決することが求められます。そこで、GISやGPS等の地理空間情報技術を用いて、災害発生から、緊急対応、復旧、復興に至る時間的流れの中で、生活を継続するために役立つモデルやツールづくりを目指します。
 地球温暖化の影響か、世界的に風水害の被害が増えています。アジア各国の洪水や、米国でのハリケーンカトリーナによる高潮災害は記憶に新しいところです。また、スマトラ島沖地震の津波被害はとても大きなものでした。日本でも、台風や集中豪雨による風水害被害は後を絶ちません。また、能登半島地震や新潟県中越地震の被災者は、今もなお避難生活を続けています。それぞれの経験が、災害文化として地域に根付き、教訓が世代や地域を越えて活かされることを願い、研究に取り組みたいと思います。


❖(B)環境調和まちづくり

都市はその地域だけで成り立つのではなく、広大な自然環境、自然生態系のすそ野に支えられて成り立っています。きれいな水、新鮮な空気、食糧などが絶えず供給・循環されることが必要です。水と土、緑を中心に取り上げ、真に環境と調和した都市のあり方とそれを実践するまちづくりを研究しています。BテーマではAテーマの防災、Cテーマの環境をつなぎ融合する、地球環境対策と防災を統合した取り組みをめざして、神奈川県拡大流域圏などをフィールドに研究を行っています。また、GISの情報基盤を活用した水環境研究、持続可能な流域圏の研究について、米国レッドランズ大学研究所(the Redlands Institute)、中国清華大学環境科学工程系杜研究室と学術交流を行っています。

 

研究対象:
神奈川県拡大流域圏、丹沢山系・水系、桂川・相模川流域、横浜市帷子川流域圏、保土ヶ谷区和田町周辺

 

キーワード:
持続可能な流域圏社会MA(国連ミレニアムアセスメント)生態系サービス、都市・人間活動、社会経済活動、時空間情報プラットフォーム、水環境マネジメント、里山、斜面緑地

 

研究で係わりがある機関
大学:米国レッドランズ大学レッドランズ研究所、中国清華大学環境科学系杜研究室
学会:日本建築学会
行政:神奈川県、横浜市、秦野市、平塚市、都留市
協会等:ニッセイ財団
NPO等:桂川・相模川流域協議会、桂川・相模川流域ネットワーク、NPO法人神奈川県自然保護協会
企業:ESRI, EARI Japan、(株)パスコ

 

最近のおもな研究プロジェクト(2004年度以降)
・持続可能な拡大流域圏の地域住民、NPO, 行政、研究者の実践的協働を実現する空間情報プラットフォームの構築(ニッセイ財団学際的総合研究助成 2006年10月~2008年9月)
・持続可能な生存基盤構築のための環境防災統合型空間情報プラットフォーム(科学研究費補助金 2007~2008年度)
・アジア視点の国際生態リスクマネジメント(文部科学省グローバルCOEプログラム 2007~2011年度)
・郊外風による冷気の誘導検討(都市環境気候地図の作成)に関する研究(地方自治体 2008年度)

 

(教員コメント)
 最近、地球温暖化の影響でしょうか、大雨による被害がひんぱんに起こっていますが、環境問題と災害がこのように相互に関係する現象が見られます。考えてみると、環境問題も災害も人間活動とそれを取りまく物理的な環境の不具合が現れている現象という意味では、同じです。人間活動と物理的な環境の間でどのようにいい関係を築くかが求められているといえます。
 われわれを取り巻く物理的な環境を「気圏」、「水圏」、「地圏」に分けると、地球環境問題は地球温暖化を例にとれば、人間が地球の環境容量を超えてエネルギー消費にともなうCO2を発生させて、それが最も拡散し地球規模で影響を受けやすい「気圏」に、この数十年の間に顕在化した不具合と言えます。一方、災害の最も根源的なものは地殻変動による地震ですが、これはプレートのひずみがたまって、百数十年あるいは数百年に一度、大きなエネルギーの形で発散されて不具合が起こる「地圏」の現象です。環境問題はゆっくりと絶えず進行する不具合、災害は間欠的に、しかも起るときははっきりと分かる形で起こる不具合です。人間の寿命が最長100年ですから環境問題と災害は区別されますが、人間の寿命が1万年だったら地震災害が環境問題になるのかも知れません。
 もう一つ別の見方をすると、災害現象は限られた地域だけに起こる現象、地球環境問題は全地球規模で起こる現象ですから、人類という種の生存を考えた時には地球環境問題の方が人類絶滅の危険があるという意味で、より深刻かもしれません。あるいはすべての災害対策には地球環境対策のベースの上に取り組む必要があるともいえるかもしれません。とはいうものの、原子力発電所に起こる災害は場合によっては全地球規模に影響を与える可能性があるなど、人類がより広範に影響を与える技術を扱うようになったことから、地球環境問題と災害の区別がなくなってきているともいえます。
 「気圏」の環境問題、「地圏」の災害の中間にある「水圏」をテーマにすることで環境問題と災害現象をつなぎ、物理的な環境を統合的にとらえることにチャレンジしたいと考えています。 (佐土原聡)


❖(C)都市環境インフラ分野

特に東京、横浜といった大都市の活動を支える環境インフラストラクチャーに関する研究を行っています。ここで言う環境インフラストラクチャーとは、ヒートアイランドをはじめとする都市・地域環境問題や、地球温暖化、化石燃料枯渇などの地球環境問題に貢献し、人間-建築-地域-都市活動の継続を実現するためのインフラストラクチャーです。私たちの生活はあらゆる面でいろいろなインフラストラクチャーに支えられており、都市で集積、活動することによって様々な環境への悪影響をもたらしています。都市への資源、エネルギーのインプット、アウトプットをできるだけ減らすスマートな(賢明な、効率的な)インフラストラクチャーの計画、スマートなライフスタイルを実現する社会の提案を目指します。

 

都市環境インフラに関する連携機関
学会 ⇔ 日本建築学会、空気調和・衛生工学会、都市計画学会
協会 ⇔ 都市環境エネルギー協会、日本熱供給事業協会
行政 ⇔ 国土交通省、経済産業省・資源エネルギー庁、神奈川県、横浜市、川崎市
大学 ⇔ 横浜国立大学未来情報通信医療社会基盤センター
その他 ⇔ NPO法人産業・環境創造リエゾンセンター

 

キーワード:
都市エネルギーシステム、地域冷暖房、コジェネレーション、ヒートアイランド、エネルギーシステムシミュレーター、打ち水(散水)、保水性舗装、エネルギーの面的利用建物間エネルギー融通地域エネルギーマネジメント分散型エネルギーシステム、ライフスタイル、エネルギー消費、都市有機性廃棄物循環活用

 

最近のおもな研究プロジェクト(2004年度以降)
・首都圏大都市域のサスティビリティ実現に向けた地域エネルギーシステムの再構築(科学研究費補助金 2004~2006年度)
・京浜臨海部の産業排熱需要マッチングシステム調査(環境省 2005年度)
・CGSで地域エネルギーのベースロードを供給する都市の構造とエネルギーシステムの最適化の研究(企業 2006年度)
・新横浜3施設ESCO事業における面的エネルギー融通の省エネルギー効果検証(企業 2007年度)
・高熱需要密度地域へのCGS導入によるCO2削減効果に関する研究(企業 2007年度)
・分散型エネルギーシステムを活用した建物間エネルギー融通の効果と成立要件に関する調査研究(企業 2007年度)
・港区における分散型エネルギーシステムの導入可能性と効果の評価に関する研究(企業 2007年度)
・首都圏における分散型エネルギーシステムの導入可能性と効果の評価に関する研究(企業 2008年度)
・分散型エネルギーシステムを活用した建物間エネルギー融通の効果と成立要件に関する調査研究(その2)(企業 2007年度)
・建物間エネルギー融通による省エネルギー及び省CO2効果の検討(企業 2007年度)

・既成市街地における街区エネルギーコミュニティの構築可能性(科学研究費補助金若手研究B 2011年度~)

・太陽エネルギー利用と蓄熱・蓄電技術を融合した高自立循環型エネルギー供給システムに関する技術開発[エコスカイハウスプロジェクトⅡ](平成22年度国土交通省「建築・住宅関連先導的技術開発事業」採択、三菱重工業・菱重エステート・横浜国立大学)

 

(教員コメント)
 最近の具体的テーマは、「エネルギーの面的利用」です。これまでも、研究をやってきた地域冷暖房もエネルギー面的利用の一つの形態ですが、地域冷暖房は大規模な再開発や新開発でないとなかなか導入できません。一方で、既成の高密度な市街地はたくさんある。これからは、既成の市街地に着目して、既存建物の既存設備も活用しながらの2-3棟くらいの建物エネルギー融通が期待されます。
 また、世の中で「エネルギー面的利用」という言葉をよく耳にするようになりましたが、「じゃあ誰がやるの?」ということは誰も言っていないし、誰も考えようとしない。これじゃ、いつまでたっても進まないわけです。ヨーロッパの地域熱供給は都市生活の基盤として地方自治体が主体となって行われてきたし、近年、ロンドン市は都市開発の中で再生可能エネルギーを取り入れる法ができて、都市計画と一体的に省エネルギー、省CO2対策が行われつつあります。日本においても、ロンドン市などの事例に習い、都市計画、都市政策の中でエネルギーの面的利用を実現していく必要があり、それを支援するツールや、評価技術を構築しなければならないと考えています。(吉田 聡)